一般的に、病院内に設けられた臨床検査部門では、検体検査や生理検査を行う。その目的は、血液を検査したり、心電図を測定したりすることで、患者の健康状態や病気の原因を調べることにある。では、治験に特化した病院の臨床検査室では、どのような業務が行われているのだろうか。室長を務める宮地氏に話を聞いた。


血液や尿などの検体検査のほか
物動態試験の処理も手がける。


臨床検査室の仕事内容を教えてください。

大きく分けると2種類あります。検体検査・生理検査と、薬物動態処理です。
検体検査とは、血液や尿などの検体を検査すること。生理検査とは、心電図や血圧などを測定すること。これらの検査は、一般病院の臨床検査部門でも行われていることかと思います。
一方で、薬物動態処理は、治験に特化した病院ならではの業務かもしれません。薬物動態試験とは、人に投与された薬物が、体内でどのように吸収され、排泄されていくのか、その経過を調べることです。大阪治験病院が担うのは、薬物動態試験のプロセスの一部です。たとえば、投薬された被験者さんの血液を1時間おきに5回採取して、それぞれの血液に必要な処理を施して保管し、定められた日時に検査機関へ送る。これが、私たちの仕事になります。送り出した血液は、外部の検査機関で、さらに詳しく検査されます。



治験実施計画書に従って
細部まで正確に検査を行う。


治験に関わる臨床検査の特長とは、何でしょうか。

正確さを追求しなければならないことです。もちろん、一般病院の臨床検査部門でも、正確な検査を行っていると思います。ただ、治験の検査に求められる正確さは、あらゆる作業に及び、それぞれのレベルが非常に細かく、とても厳格です。一般病院で経験を積んでから当院に転職したスタッフは、たいてい「ここまで正確にしなければいけないのか」と驚きます。そう言いながら、どのスタッフも1カ月程度で慣れてくれるので、頼もしく思っています。


作業の流れを教えてください。

治験に関わる検査であれば、すべての作業は治験実施計画書にのっとって行われます。まずは、計画書に指示されている検体を、指示されているタイミングで、指示された通りに採取します。採取した検体は、指示された通りに処理して、指示された方法でデータをとります。その後、指示された環境で保管し、指示された日時に指示された機関へ送ります。ちなみに、これらの全過程で詳細な記録をとり、一定期間保管しておくことが求められています。大阪治験病院には、開院以来の膨大な記録が、すべて残されています。



正確・迅速な検査を行うため
各部署と連携し、入念な準備を。


仕事を行ううえで、心がけていることはありますか。

前述の通り、何ごとも正確に行うことです。また、迅速に行うことにも努めています。
臨床検査室にとって、治験実施計画書に従って行動することは、もっとも重要な任務のひとつです。私たちが扱うのは、人の命に関わる薬の候補です。それがどれだけ有効なのか、本当に安全なのか、正しいデータをもって確かめる必要があります。より良い医薬品をいち早く世に送り出すためにも、細部まで完全に正確な検査をめざしています。
また、治験は臨床検査室だけで行うものではありません。被験者の方々、看護師、CRC(治験コーディネーター)、担当医師など、たくさんの人や部署と連携して行うものです。これを成功させるには、それぞれが時間を守り、着実にバトンを渡していく必要があります。迅速であることを心がけるのは、それが理由です。


正確さや迅速さを実現するために、行っていることはありますか。

準備に力を入れることです。まずは、スタッフ全員で治験実施計画書読み込みます。そして、人員や機材の状況と照らし合わせながら、検査の実施が可能かどうかを検討します。それから、看護室やCRCなど、関係する部署や人と打ち合わせを重ねて、連携する流れを確認。現場で起こり得るさまざまな事態を想定して、それに対応できる準備を整えていきます。もちろん、治験当日は、予想外のアクシデントが起きることもあります。しかし、入念な準備をしていれば、治験実施計画書から逸脱しないように、素早く適切に対応することができます。
また、準備と同じことではありますが、検査に使う機器や試薬の点検・確認も重視しています。冷蔵庫や冷凍庫は毎朝状態を点検し、遠心分離機などの機器は定期的にメンテナンスを行います。検査に使う試薬も、数や使用期限をこまめに確認します。日頃から検査室の環境を最善の状態に保っておくことも、大切な仕事のひとつです。



外部調査などを活用して環境を整え
幅広い要望に柔軟に応えていく。


やりがいを感じるのはどんなときですか。

治験に関わる者としては、新薬を生み出すお手伝いができることに、大きなやりがいを感じます。ただ、一番うれしくなる瞬間は、検査が無事に終了したときかもしれません。臨床検査室として、要求された仕事をまっとうし、次の部署へバトンを渡せたときに、達成感を感じます。


製薬会社に勤める方々や、生体試料を求める方々に、メッセージをお願いします。

臨床検査室の強みは、正確・迅速に検査を行う環境が整っていることです。検査室では、日本臨床衛生検査技師会の臨床検査精度管理調査に参加しており、近年は毎年A判定の評価を受けています。また、同じく日本臨床衛生検査技師会の日臨技品質保証施設認証も取得しています。他部署との連携体制も整っていますので、安心して治験をお任せいただければと思います。
加えて、幅広い経験があるたことも、私たちの強みです。これまでに、血液、尿、皮膚、精液など、多様な検体の検査を行ってきました。年齢や疾患など、条件付きの検体も数多く扱っています。また、大規模な検査や急ぎの検査に対応した実績も豊富です。
治験のことでも、生体試料のことでも、何でもお気軽にご相談ください。目標の達成や課題の解決に向けて、一緒に考えさせていただければと思います。


(公開日:2026年 5月 26日)