治験を行う際は、被験者の人権と安全を守るため、第三者的な視点から治験の内容を審査する治験審査委員会(IRB)に審査を依頼しなければならない。大阪治験病院のIRBは2005年10月に設置された。セントラルIRBとしての役割も果たしており、2021年6月までに約250回の委員会を開いている。

セントラルIRBとして
年間16回の委員会を開催。


IRBの開催頻度や審査数などについて教えてください。

大阪治験病院では、原則として3週間に1回IRBを開いています。日本の医療機関は、IRBの開催頻度を月1回とするところがほとんどですから、平均より少し多い方だと思います。1回の委員会で審査する案件の数は、初回審査が多くて7件、治験継続の可否に関する審査が20件程度でしょうか。治験に特化した医療機関ということもあり、毎回かなりの件数を審査しています。IRBが設置されて約15年経ち、たくさんの実績を積ませていただいたように思います。

IRB事務局の仕事内容について教えてください。

主な仕事は、審査に必要な書類の作成、委員会の進行、議事録の作成などです。当院ではIRBを設置した当初よりセントラルIRBとして平心会やインクロムの提携医療機関からの治験審査依頼を受けていますが、2020年よりこれらの施設以外からの審査依頼も受け付けるようになりました。
このことで仕事内容が大幅に変化するようなことは基本的にないのですが、注意するべきことが増えました。医療機関によって、常識や習慣は異なるものです。お互いが「揃っていて当たり前の資料」「伝えなくても分かること」と認識していることが、必ずしも一致しているとは限りません。特に初めての医療機関とやり取りをするときは、普段以上に関係者と密に連絡を取り、作業が順調に進んでいることをこまめに確認するようにしています。

2015年に倫理審査委員会(ERC)を設置。
2020年からセントラルIRBもさらに発展。


IRB事務局の業務体制は、どのように整えられたものですか。

現在のIRB事務局の業務体制は、退職した前事務局長が整えたものです。前事務局長は、薬剤師・治験コーディネーターとして豊富な実績をもち、治験を隅から隅まで熟知している人でした。正確・効率的に審査を行うための業務体制を、在職中に練り上げて構築してくれたので、私たちはそれをそのまま受け継いでいます。

2015年に倫理審査委員会(ERC)を設置した背景を教えてください。

2015年、「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」(現:人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針)が施行されました。内容を確認すると、大阪治験病院でこの倫理指針に関わる試験を行う可能性が高いことが分かりました。ならば、その試験の審査を行うERCが必要です。このような流れで、大阪治験病院にERCを設置することになりました。

ERCを設置するにあたって、苦労したことはありますか。

前事務局長と違って、私は事務畑の人間です。薬学の専門知識もなければ、現場の経験もありません。指針の内容を理解するのも一苦労で、プレッシャーに圧し潰されそうでした。ただ、幸いなことに、私の周りには専門知識や現場経験が豊富な人がたくさんいました。インクロムや平心会で長年働く諸先輩方の元を回って、知恵を借り、協力を仰ぎながら、おかげさまでなんとか設置にこぎつけました。現在も、いろいろな方に支えていただきながら業務を行っています。

セントラルIRBの業務について教えてください。

IRB設置当初よりセントラルIRBとして審査依頼を受けていましたが、2020年より平心会やインクロムが提携を結ぶ施設以外の医療機関からも審査依頼を本格的に受け付けるようになりました。IRBの業務自体に変化はありませんが、医療機関によって作業の環境や習慣が異なるので、注意が必要です。たとえば、資料の電子化に対応している場合としていない場合では、当然手続きの作業が変わります。「揃えるべき資料」の認識が異なる場合もあります。特に初めての医療機関とやり取りをするときは、普段以上に関係者と密に連絡を取り、作業が順調に進んでいることをこまめに確認するようにしています。
また、同意説明文書などをチェックした際に、委員会で指摘が上がりそうな点が発見できた際は、事前に医療機関へ伝達するようにしています。事務局の経験と知識が補える範囲で、見直しのやり取りなどを事前に防ぎ、できる限り医療機関の業務負担を軽減するよう努めています。

より正確・迅速な審査が行われるように
委員にとって審査しやすい環境を整えたい。


IRB・ERC事務局で働くやりがいは何ですか。

やりがいは、委員を務める先生方と一緒に働けることです。先生方は、被験者保護を大前提として、非常に厳しく鋭く治験の内容を吟味されています。一方で、医薬品を待ち望む患者さんを思いやる気持ちも忘れず、倫理的・科学的な視点をもって真摯な態度で審査に向き合われています。先生方の言動から学ぶことはあまりにも多く、進行役として会議に参加できることを幸せに思っています。ですから、事務局としては委員の先生方にとって審査がしやすい環境を整えていきたいと考えています。

製薬会社に勤める方々に対して、伝えたいことはありますか。

大阪治験病院のIRB・ERCは、開催頻度の高さが特長です。そして、第Ⅰ相試験から第Ⅲ相試験、FIH試験、FIJ試験、特殊な臨床薬理試験など、さまざまな試験の審査経験があります。審査を担当する委員の先生方は、審査経験はもちろん、それぞれの専門分野における豊富な知識と経験をおもちで、活発な議論を通して試験を厳正に審査しています。
また、平心会やインクロムが提携を結ぶ施設の治験事務局とは日ごろから密なコミュニケーションをとっているので審査までの手続きはスムーズです。それ以外の施設から審査の依頼を受ける場合は、事前に治験依頼者、施設へ向けて説明会を行っています。初めて審査を依頼する側からすれば勝手が分からず不安に感じることもあるかと思います。問い合わせ事項には迅速に回答する、必要であれば1施設ずつ連絡をとるなど安心して手続きを進めていただけるような対応を心がけています。正確で迅速な審査をお求めであれば、ぜひ私たち当院に審査をお任せください。

(公開日:2021年 00月 00日)